「今直面している解決しなければならない課題は何ですか。」
プライベートコーチングでスタッフに投げかける質問です。
最近は、研修にキャリア支援の要素を入れてほしいという要望が多くなってきました。
マンツーマンで行う、プライベートコーチングもキャリア支援の一環として実施されます。
先の質問に対して多いのが「新人に仕事を教える」ことに関連した答えです。
「教えること」を前向きに捉えられていれば良いのですが、プレッシャーやストレスに感じていることが問題です。
「覚えることが多すぎる」と、教わることのプレッシャーを訴える人もいました。
このように仕事を「教える」または「教わる」ということをネガティブに捉えているスタッフのコーチングが続くと考えてしまいます。
教わることや教えることで得られる気づきや学びもあります。けれども、仕事のペースを自分でコントロール出来ない状態、「振り回されている」と感じられる状態が続くと、スタッフの離職やモチベーションの低下など、全体への悪い影響が懸念されます。
なぜ、教えること、教えるわることがストレスなのか
忙しい日常業務をこなすなかで教えたり、教わったりするのですから、
双方の負担は周りの人も察するところです。
けれども、彼女たちの話を聴いていると、「教える側と教わる側の認識のギャップ」がストレス要因の根っこの部分にあるように感じます。
教える側の一番の悩みは、「顧客への対応の仕方をどう指導するか」です。
実務的なことには、マニュアルやチェックリストなども活用できますが、
最も大切な顧客対応に関しては、どのようにやり方を共有したら良いのか、
試行錯誤している教える側の苦悩が伝わってきました。
つまり、教える側のゴールは、
「自分たちの仲間としてふさわしい顧客対応ができるようになること」なのです。
一方で、教わる側は実務的な「覚えること」の他に、
顧客対応を「身につけていくこと」が求められていることを認識できていない。
あるいは、求められていることはわかっているけれど、「覚えること」と「身につけていくこと」の区別ができていないので、「覚えることが多すぎる」とネガティブな心理状態を作り出してしまします。
このようにゴールが共有されていないことで起こるコミュニケーションギャップは双方に「がんばっているのに虚しい」という感情をおこさせる場合もあります。
なぜ、現場の経験豊かなスタッフが顧客対応にこだわるのか。
それは、良くも悪くも新人の顧客に対する対応が、
顧客の心理状態というかたちで、
「自分に返ってくる」ということを分かっているからです。
つまり、顧客対応にこだわるということは、
顧客の心理状態を適切にコントロールして、
自分の仕事でより良い成果を上げたいというプロ意識の表れです。
教える側の心の声は
「プロ意識をもって、顧客対応にこだわってほしい」というものなのです。
顧客対応の視点からゴールを共有する
プロ意識をもって、顧客対応にこだわるには、次のような段階が必要です。
1. 自分たちの仕事には「顧客視点」が重要であることを認識する。
2. そのうえで、自分たちにとって望ましい結果を生む効果的な顧客対応のポイントは何かを共有する。
3. そして、どうすれば実行できるかという具体的なやり方を身につける。
一連の過程で、自分たちとのやり取りを顧客がどのように受け止めるかを意図的に設計していくことは、スタッフにとって楽しい体験になるはずです。
これら取り組みは、個人的に行われるのではなく、組織全体で働く仲間が一緒に向き合うことで、
「顧客対応の改善」という経営戦略として測定可能な成果が期待できます。
「顧客対応へのこだわり」というスタッフのニーズを反映した経営戦略の実践は経営者にしかできないことです。
今の状態に何らかの違和感を持ち、何かを変えなければ、と思っている経営者の方は
「顧客対応の改善」の取り組みを、今までとは少し違った視点から検討するチャンスです。
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