ファッション誌の記事で「医師と患者の両方が、医学的な意思決定のプロセスに参加する」という意味の「シェアード・ディシジョン・メイキング」(Shared decision-making in medicine)が紹介されていました。
記事の内容は、「健康×美容」をテーマとした様々な医学的アプローチの紹介です。
記事を読んで、「健康と美容」に興味を持つ一読者として、医療の側の人が「シェアード・ディシジョン・メイキング」の考え方を持っていてくれたらありがたいし、患者としての自分も「自己決定」の意志を持ちたいと思いました。
「確かに、わたしは自分で治療を決めたい。(そのほうが後悔しないし)」
けれども、
「医療という専門分野のことを自分だけで決めるのはムリ」
というのが本音です。
一方、医療者側にも「(絶対の正解はないのだから)自己責任で治療を受けてくださいね」というリスク回避の側面があります。
ファッションでも、働き方でも、選択肢が増えたからこそ「主体的に決める」ことに前向きに取り組む人、またそれを推奨する気運が高まっていると感じます。
早速、歯科医院のスタッフと、医院全体で「シェアード・ディシジョン・メイキング」というコミュニケーションスタイルに取り組む、という前提で話し合ってみました。
まずは、ワークフローのなかで、自分たちにどのような意識や行動があったらよいかについて。
・皆が同じでないということを認識する。(だから同じ対応ではだめ)
・患者さんの個性を知ろうとする。
・患者さんの表情や態度を観察する。
・患者さんが話したいことを遮らない。
・患者さんがどんな人か知るために(あらかじめ)情報を集める。
・患者さんの職業に興味を持つ。
・自分が集めた情報を他の人と共有する。
・カルテに書かれていることを参考にする。
・患者さんの態度や話したことで、気になることがあったらスルーしないで質問してみる。
・患者さんの言っていることを自分なりに理解する。
・自分の発言や行動を相手に合わせて調整する。
・患者さんに(以前と)変化がないか観察する。
etc・・・
ひとり一人の発言には、「日頃の実践」に裏付けされた現実味があり、発言の内容がただの「理想」ではないことがわかりました。
現場には、すでにインフォームドコンセントという言葉に伴う考え方が浸透し、スタッフは丁寧な説明を心がけています。
そのなかで、「説明」だけで足りない場面では、患者さんの意思決定までのプロセスに自然に寄り添っていたのです。
歯科医院が、「予防に取り組んでいます。」「審美的な治療にもこだわっています。」
ということは、このような丁寧で洗練されたコミュニケーションが実践されているということです。
なぜなら、これらの治療には「絶対の正解」がないからです。
「人それぞれの正解がある」とも言い換えられるでしょう。
社会的な傾向から見ても、これからは、患者も医療者も「自己決定」に対してさらに自覚的になっていくと考えられますから、「自己決定を尊重したコミュニケーションに医院をあげて取り組んでいる」ことはアドバンテージになります。
「自己決定を支援するコミュニケーション」は難しいことでしょうか。
確かに一朝一夕にできることではないと思います。
敢えてその過程を簡単に言ってしまえば、
1. 自分たちがどこを目指すのか、明確なゴールを決めて、言語化する。
2. そして、一人ひとりが「どう実践したか」をみんなで共有することで、
3. 一人ひとりが「次はもっとこうしてみよう」という新たなアイディアを考える。
1を見据えながら2と3のサイクルを回すことです。
このサイクルを回すために、どこから始めますか?
「患者の自己決定を支援する」という新しい姿勢には、新しいスキルが必要です。
MBDでは、ホスピタリティの考え方を土台として、歯科医院におけるコミュニケーションの実践支援プログラムを提供しています。
お問合せ ⇒ yoko-kagami@medical-bd.com
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