慶応MCCの平田オリザさんと創る【表現力を磨く演劇ワークショップ】に参加していました。
この講座での私の一番の気づきは、人が発する言葉というのは、辞書に書いているような「意味」が独り歩きをしているのではなく、その言葉が交わされる相手との関係や、周りの環境によって意味付けされているということです。
体験してみてわかったことですが、私にとってその言葉を発する必然性がなければ、セリフとして与えられた言葉がうまく言えない。だから、自分でも違和感があるし、相手にも違和感をもたれてしまう。そういう違和感があると、ストーリー自体が相手に受け取ってもらえない。
同じセリフを自然に言える人もいる。でも自分が言えるからってそれで安心してはいけない。相手はちゃんと受け取れているか?
つくづくコミュニケーションって難しいと思いました。
講座では平田先生のレクチャーとワークの他に、実際にグループで一つの演劇作品を作り発表するという創作活動があります。
登場人物の発する言葉だけで必要な情報を観客に伝え、違和感のないストーリーを持った表現として完成させる演劇の創作過程は、とてもハードで、だからこそ多くの学びがありました。
なにしろ全員が演劇未経験の素人集団ですから、作っている本人たちがお互いにセリフに対して「腑に落ち感」を得るだけでも大変です。
「この会話があれば、こういうことだってわかるでしょう、ふつう・・・」
「???」
「ここでこんなことは言わないでしょう、ふつう・・・」
「そうかな?」
といった具合です。
行き詰まり感ありありで、混沌の最中にいる時も、平田先生がニコニコ顔で「どのグループもいい感じですね」とおっしゃると、不思議となんだか安心しました。
シナリオ作りで平田先生からアドバイスいただいたのは、その登場人物に対して出来るだけたくさんエピソードを集めること。
私が担当した役はNHKのアナウンサーでしたので、アナウンサーのブログや、NHKのホームページ、出版物などを片端から読みました。そこから得られたエピソードの数々から、アナウンサー魂みたいなものが理解できると、セリフがリアルになり「絶対ここではこう言うでしょ。」となるのです。
同じ言葉であっても、人によってその言葉の持つ意味や、イメージするものが違います。
創作過程でそのことが実感できました。
お互いの「言葉の持つ意味」をすり合わせながら、ヘトヘトになって作り上げた10分間の演劇作品は、なんだかとってもいとおしいものでした。
言葉のやりとりから、その人の背景を感じ取り、その人の歩んできた人生に敬意を表することができる、そんな人になりたい!
そうだ、そこに一歩でも近づきたくて、私はこの講座に参加したのだ。
最終回を終えて数日後の今、ようやく気がついたのでありました・・・
かがみ洋子
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